空き家の問題は、特別な家庭だけの話ではありません。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%とされています。
つまり、実家が空き家になる悩みは、いま多くの家庭が向き合っている身近な問題です。

放置すると何が起こるのか。
まず家は人が住まなくなると一気に傷みます。
風通しが悪くなり、雨漏りやカビに気づきにくくなり、庭木や雑草が伸びれば、近所トラブルの原因にもなります。
さらに、防犯面や火災面の不安も出てきて、状態が悪いまま改善されないと、行政から「管理不全空家」や「特定空家」として対応を求められることがあります。
ここで大事なのは、いきなり「売るか残すか」を決めようとしないこと。
先に決めるべきなのは「いつまでに結論を出すか」。
期限がないと、気持ちの整理がつかないまま数年たち、管理費だけが増えます。
空き家は迷っている時間にもコストがかかるので、まずは3か月から半年で方針を決める前提を持つと動きやすくなります。
実家の空き家で最初にやること
最初の3か月で確認したいのは、名義、家の状態、維持費、家族の意向の4つ。
名義があいまいだと売却も活用も進みません。
家の状態は、屋根や外壁、水回り、庭の様子を見て「すぐ住める家か、手直しが必要な家か」を把握します。
維持費は固定資産税、火災保険、草刈り、見回り費用まで含めて考えましょう。
固定資産税については、「空き家でも家があるから安いまま」と思い込むのは危険。
住宅用地の特例では、200㎡以下の小規模住宅用地は固定資産税の課税標準が6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されますが、適切な管理がされず勧告を受けた管理不全空家や特定空家では、この特例の対象外になることがあります。
遠方に住んでいるなら、「自分で管理できるか」も重要で、月に何回通えるか、片道何時間かかるか、家族の協力はあるか。
この負担が大きいなら、気持ちより先に現実を見たほうが失敗しにくいです。
実家を残したい気持ちは自然ですが、通えない家は傷みやすく、結果として手放すときの条件も悪くなりやすいからです。
たとえば、母が施設に入り、娘が月1回だけ実家に通うケースを考えてみましょう。
最初は「とりあえず残そう」と思っていても、庭の手入れ、郵便物の整理、雨漏り確認を続けるのは簡単ではありません。
1年たつと、管理の負担が予想以上に重く感じることがあり、こうした場合は、早めに売却査定や賃貸の可能性を確認するだけでも、判断がかなり楽になります。
実家をどうするかの選び方
売却が向いているのは、今後住む予定がない、遠方で管理しづらい、家族の誰も使わないというケース。
現金化できるので負担を切りやすく、管理の悩みからも離れられます。
一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を特別控除できる制度もあります。
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することなどが要件で、適用期限は2027年12月31日まで延長されています。
ただし、売却にはデメリットもあります。
思い出のある家を手放す心理的な負担がありますし、築年数や立地によっては希望価格で売れないこともあります。
片付けや名義整理に手間がかかる点も見逃せません。
賃貸や活用が向いているのは、立地が悪くない、少し直せば住める、将来また使う可能性があるケースで、家を残しつつ収入につながる可能性があるのがメリット。
一方で、修繕費や入居者対応の手間が発生し、古い家ほど思ったように貸せないこともあります。
「貸せる家かどうか」は気持ちではなく需要で決まるため、地域の不動産会社に早めに聞くことが大切です。
解体や維持が向いているのは、建物の傷みが強く活用しづらい、土地として使う予定がある場合です。老朽化した家をそのまま抱え続けるより、選択肢が整理されることがあります。ただし、解体費用がかかるうえ、税負担の変化もあるので、勢いで決めるのは避けたいところです。
迷ったときに失敗しにくい判断基準
迷ったときは、お金だけで比べないことが大切で、おすすめは「通う負担」で考える方法です。
月に1回でも無理なく通えるなら維持や活用の可能性があり、反対に、移動だけで半日かかる、家族の協力もないなら、残す選択は思った以上に重くなります。
空き家は所有コストより、管理を続ける体力のほうが先に限界を迎えやすいからです。
家族で話すときは、「誰が管理するか」「いつまでに決めるか」「売るならいくら以上なら進めるか」を先に決めておくと、感情論だけになりません。
実家の話は思い出が強く入るぶん、話し合いが止まりやすいもの。
だからこそ、気持ちと現実を分けて整理することが必要です。
実家の空き家問題に、ひとつの正解はありません。
ただ、放置しないことだけは共通の正解で、すぐ売らなくてもかまいません。
まずは期限を決め、現状を知り、家族で役割を決め、その順番で進めれば、後悔の少ない選択に近づけます。 。

